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MUSIC LAMP 出演「フロントページ・オーケストラ」バンドリーダー三木俊雄氏インタビュー

2024年2月17日に札幌コンサートホールKitara 大ホールにて開催される、ライラックチャリティMUSIC LAMPに出演の「フロントページ・オーケストラ」でバンドリーダーを務める、テナーサックス奏者三木俊雄さんに、先日インタビューを行いましたので、その内容をご紹介します。

(取材・文/原田和典)


— どのようなつながりでメンバーが集まったのか、教えていただけますでしょうか?

フロントページ・オーケストラを始めて25年以上が経ちますが、始まった当初はみんな本当に若くて、ほとんど独身でした。「こういうバンドを始めようと思うんだけど、手伝ってくれる?」と話しかけると、本当に手弁当に近い形で集まってくれて、演奏してくれました。今となっては日本を代表するプレイヤーが集まっているように思えるかもしれませんが、基本的には若い頃からの交友がそのまま継続している感じです。

— 管楽器7本を含む10人編成という、他ではほぼ見かけないフォーメーションにした理由は?

例えば百人のオーケストラで演奏したとしても、決して百個の音を同時に鳴らすわけじゃないですよね。ちょっと専門的な話になりますが、1オクターブの中には音が12個あります。でも12個を同時に鳴らすと、全然音楽としては成立しません。1オクターブの中で、通常は多くても六個ぐらいの音としか同時に出さないんです。ということは、管楽器6人がいればまあ、あらゆるハーモニーが出せるということになるんですが、僕はあえてそこを7人にしました。管楽器全員で音を出した時に、ダブる箇所を作りたかったんです。その「ダブる」ということが僕にとってはすごく実は贅沢なことで、一種の遊びの部分といえるかもしれませんが、その遊びがあるから、特定のパートが浮き立つこともあるし、ちょっと難解なフレーズでもユニゾンで演奏すると、説得力が全然違うんです。7管編成というよりも、“6+1”管の編成という感じですね。

— ジャズではあまり用いられないブラス楽器“ユーフォニアム”の導入も、フロントページ・オーケストラの音作りを一層、個性的にしていますね。

僕はフロントぺージ・オーケストラを始めるまで、ユーフォニアムについて知りませんでした。吹奏楽の経験がないので、見たこともなかったんです。このバンドでユーフォニアムを吹いている山岡潤は国立音大を卒業して、ノース・テキサス大学(米国テキサス州デントン)で学んでいます。日本に帰ってきた直後に、僕がバンドのコンセプトを伝えて、一緒に音を出したところ、本当にバッチリで、「これはいただきだな」と思いました。ヴァルヴがついているのでトランペットのようなメカニカルがラインができますし、太くて暖かい音ですから、ユーフォニアムがあると、バス・トロンボーンやフレンチ・ホルンやチューバが入っているような、音の厚みも表現できるんです。

— フロントページ・オーケストラならではの個性、大切にしている点は何でしょうか?

全員がソリストであるということですね。セクションに徹するプレイヤーはひとりもいなくて、必ずワンステージに一度はみんなのソロ・パートがある。バンドの歯車になることなく、みんなが自分の主張を持ってプレイをしています。僕はバークリー音楽大学(米国マサチューセッツ州ボストン)で学んでいた時に、ラインライティングというクラスをとっていました。譜面の中には、一番高いリード・メロディだけのメロディが美しくて、ほかのパートは自分で吹いててもどこを吹いているのかわからないようなものも多いのですが、ラインライティングはどのパートにもメロディとしてのクオリティを持たせて、なおかつハーモニーも質の高いものをという、その両立を目指すものでした。先生が言っていたのは、「リードを吹くアルト・サックスが風邪で休んでも、セカンド・アルト・サックスのパートがメロディとして成立するような譜面を書きましょう」ということ。僕もそうなるように心がけてアレンジを書いています。

— 2月17日のコンサートでは、スタンダード・ナンバーのほか、フロントページ・オーケストラならではのオリジナル曲もたっぷり届けてくれるとうかがいました。オリジナル曲を楽しめるコツがあれば教えていただけますか?

オリジナル曲でもスタンダード・ナンバーでも、いろんな楽器で奏でられるメロディと、それを引き立たせるカーテンのようなハーモニーを味わっていただきたいですね。

— 札幌はジャズ教育がとても盛んです。最後に、ジャズが好きな青少年たちに何かメッセージをいただけますでしょうか?

才能豊かな若手ミュージシャンに「どこから来たの?」と尋ねると、「札幌から来ました」と返ってくる機会が本当に増えています。札幌のジャズ教育に関して、僕は勝手に「英才教育的な虎の穴的な、ちょっとスパルタ的なイメージもあるのかな」と思っていましたが、ドラムの高橋直希くんに話をきいても、実際はそういうものとは真逆だとききました。先生が強制することはないし、理想的な場所と環境を与えて、あとは伸び伸びと学ばせているそうですね。今回の札幌公演ではワークショップもありますし、札幌のジャズの教育事情を逆に僕のほうが深く知りたいとも感じています。

日本を代表するプレイヤーたちが、自分のソロ・パートを演奏すると共に、どのようにしてハーモニーを構築していくか、これもコンサートの大きな聴きどころだと思います。今、誰がこんなパートを吹いているとか、ここでユニゾンになったとかハモったとか、そういう展開にも注目してもらいながら、ジャズのアンサンブルが生まれるプロセスを体感していただきたいですね。



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