シアタージャズライブ出演 曽根麻央スペシャルインタビュー
12月5日(木)~10日(火)に、札幌文化芸術劇場hitaruで開催するシアタージャズライブ。12月7日(土)に出演予定の曽根麻央 さんに、サッポロ・シティ・ジャズ2024のスペシャルインタビューを行いました。
ライブのイメージは「ルミナス」。
やさしく輝く光でホールを包みたい。
ピアノとトランペットの「ジャズ二刀流」で縦横無尽に活躍を続ける曽根麻央がオリジナルバンドBrightness of the Livesを率いて、サッポロ・シティ・ジャズに初出演します。独自のサウンドとパフォーマンスに期待が高まります。
幼少期からピアノを、8歳からトランペットを始められたそうですね。それぞれきっかけは?
父がピアノをやっていました。ピアノを弾く父の膝に乗り、父の手の上にぼくの小さな手を置いて鍵盤を押していたのが最初の記憶です。当時祖母が新宿でジャズ喫茶をやっていて、家にもジャズのLPレコードがたくさんありました。あるときルイ・アームストロングの歌声を聴いて衝撃を受けました。トランペットという楽器を吹くと知り、すぐに聴いてみて、また衝撃を受けました。「こんなキラキラした音をぼくも出してみたい」。父にねだるとマウスピースを与えられ「一か月で音が出るようになったらトランペットを買ってあげる」と言われました。出ました!クリスマスプレゼントに買ってもらったのが最初のトランペットです。
ピアノとトランペットはどうやって学びましたか。
もともの譜面を読むのが苦手で。じつは視力に少し問題があったことが後にわかるのですが。子どものころ通っていたピアノ教室でも譜面を読むよりコード解析みたいなことをして弾いていました。トランペットは最初、教則本とビデオで。でも耳コピーのほうが得意でした。将来は音楽大学へ行って音楽の勉強をしたいと考えていたので、基礎からしっかり学ばなければと思い、世界的トランペット奏者の杉木峯夫先生のレッスンを受けたり、音楽理論を勉強したりもしました。
2008年、北海道グルーブキャンプで石若駿とともに賞を受賞し、バークリー音楽大学の5週間夏季セミナーに参加しました。グルーブキャンプ、夏季セミナーで特に印象にのこっていることは?
ぼくは高校1年、駿は中学3年。初めて出会った同世代のジャズ仲間です。同世代の仲間と演奏できて、とにかく楽しかった。この世代には馬場智章や寺久保エレナもいて、彼らからは大きな刺激を受けています。タイガー大越さんのクリニックで学べたことも貴重な経験でした。その後のバークリーの夏季セミナーは、ぼくにとって初めての海外。最初はみんなの主張の強さに面食らいました。私が自己紹介で言った言葉は「I can’t speak English」(笑)。これではだめだ、自分もリーダーシップをとれるようにならなければいけないと痛感しました。
その後、バークリー音楽大学に入学し、首席で卒業。さらに修士課程も首席で卒業しました。バークリーでの日々はどんなでしたか。そこで得たものは?
バークリーは、仲間をつくれないとおもしろくないところだと思います。幸いぼくはたくさんの出会いに恵まれました。同世代のなかま、先輩や先生たち。特にタイガー先生の存在は大きいです。ぼくにとってはアメリカのお父さん。とても尊敬しています。先生のバンドに入れていただき、プロのミュージシャンたちと一緒にツアーを回ったり、レコーディングに立ち合わせていただいたりしました。得たものははかり知れないです。演奏技術はもちろん、ステージでの立ち居振る舞い、マイクのセッティング方法、インタビューの際の受け答え、自分がジャズの歴史上どんな位置にいるのか考えること・・・。最も印象深いのは人をたいせつにする気持ちです。仲間や家族、聴いてくださるお客さま。ぼくもそうありたいと思います。
トランペットとピアノの同時演奏で活躍されています。このスタイルを選んだ理由は?それぞれの楽器の魅力、同時に演奏する魅力は?
一時期、トランペットが吹けなくなった時期があります。トランペット奏者にはありがちなことです。体の使い方を一から見直し、ピアノにも改めてシリアスに取り組みました。そんなときタイガー先生から「麻央は人ができないことができるのだから、両方やってみればいい」と言われて心が決まりました。今はどちらの楽器もぼくのなかではイコールです。トランペットの魅力は直線的で華やか、アクセントをつけることができます。ピアノはキーボード全体に言えますが、オーケストレーションができて全体をつかむことができます。「二刀流」などと言われますが、必要な部分で必要な方を使っているというほうが正確かも。どちらもぼくを表現するためのカラー。使えるカラーは多いほうがいいと思います。
今後どんな挑戦をしていきたいですか。
ひとつはライフワークでもある日本の音楽とジャズの融合。大学の修士論文は日本のスケールとリズムを使いながら21世紀のインプロビゼーションを考えるというものでした。最近、日本の民謡「こきりこ節」から着想を得た楽曲をリリースしました。いっぽうで今取り組んでいる作品はすこしクラシカルなもの。弦楽四重奏と金管五重奏による8つの小品からなる組曲です。さまざまな要素を散りばめました。ラテン、ジャズ、映画音楽、フラメンコ、ゲーム音楽・・・。絵本のページをめくるようにいろいろな景色が見えてくる、そんな作品にしたいです。
シアタージャズライブには初登場です。ご自身が結成したバンドBrightness of the Livesについておしえてください。
学生時代の2014年に、ワシントンD.C.の全米桜祭りに出演を依頼されて結成したバンドです。東日本大震災からまだ2年しかたっていないとき。音楽が命の輝きになれればという願いをこめて名をつけました。全員がバークリーで出会った仲間です。当時から今も、メンバーはそれぞれにソロ活動をしていて、集まれるときに一緒にライブをするというスタンスで続けています。みんなすごく独創的でつねに成長を続けているので、いつも発見と刺激を受けています。
今回はBrightness of the Livesに加え、やはりバークリー時代からの友人でもある二階堂貴文さんもゲストに迎えます。どんなコンサートにしたいですか。
リーダーバンドとしては初の札幌ライブ。しかも二階堂と一緒に演奏できるのを、とても楽しみにしています。イメージはバンド名を冠したアルバム「Brightness of the Lives」のリードトラック「ルミナス」。やさしく輝く光で、みなさまを包みこむようなライブにしたいです。ステージ構成も練っています。楽しみにしてください。
(インタビュアー:Keiko Maruya)