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シアタージャズライブ11/23(日)の夜公演に出演する「ビレリ・ラグレーン・トリオ」の聞きどころをご紹介します。
【音楽ジャーナリスト 原田和典が語る、ビレリ・ラグレーンの魅力】
今年のシアタージャズライブにも人気アーティスト、話題のアーティストが揃う。どの公演に接しても大きな喜びがこみあげてくるのは間違いのないところだろうが、個人的に、とりわけ白眉となるであろうと考えているのが11月23日に行われるビレリ・ラグレーン・トリオの公演だ。2012年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエを授与された、まさしくヨーロッパが世界に誇るカリスマ・ギタリストであるビレリが、気心の知れたミュージシャンと共に、満を持して札幌を訪れるのである。
これまで約30点ものリーダー・アルバムを発表してきたものの、正直申し上げて来日回数も国内盤ディスクのリリースも決して多いとは言えない状態なので、彼の名前にあまり馴染みがないという方もいらっしゃるだろう。が、ジャズファンという種族が「エキサイティングなこと」や「未知のもの」に目がないということを私は知っている。しかも今回は、ギター＋サックス＋ベースという、ほとんど類を見ない編成によるコンサートなのだから、一体どんなサウンドが聴けるのかと、ますます期待がつのるではないか。ピアノもドラムも入っていないジャズ・バンドなど世の中にそうあるものではなく、その編成による音楽を快適なものとして成立させるには圧倒的な技巧、センス、リズムやハーモニーへの感覚が求められる。ビレリ・ラグレーン・トリオはそれらをおそろしく高いレベルでクリアしながら、抜群の歌心、エンタテインメント性を伴って、彼らならではのスウィング感あふれるジャズを観客に届けてくれるはずだ。1曲目が終わる頃には、誰もがビレリを知った喜び、ヨーロッパ・ジャズの浪漫に浸る快感に酔いしれているような予感がする。
もうひとつ、私は札幌ジュニアジャズスクールや北海道グルーブキャンプといった次世代のジャズ・ミュージシャンを育成するための組織に属する生徒、その父兄や関係者にもこの公演を見てもらえたらと願っている。というのもビレリは本当に幼少の頃からジャズに親しみ、少年時代にデビューし、以後40数年、たゆまぬ活動を続けているひとりだからだ。「生徒たちの、ジャズ・パースンとしての生き方」を考える上でも彼の姿はひとつの良き例となるであろう。よしんば子供の時に神童として騒がれたとしてもそれは打ち上げ花火に過ぎず、音楽を創造し続けるということは基本的に長距離走の世界である。ビレリは長距離をゆく中で音楽性の幅を広げ、向上を重ねながら現在を生きている。しかも近年のプレイには、長いキャリアからくる円熟や余裕が自然に反映されている。つまり最高の境地にいるビレリを、我々は目の当たりにできるのだ。
ビレリは1966年、フランスのアルザス地方で生まれた。父や兄からギターの手ほどきを受け、初期は伝説的なギタリストであるジャンゴ・ラインハルト（1910年生まれ、53年死去）が演奏するマヌーシュ・スウィング（ジプシー・スウィング）から強いインスピレーションを得た。ファースト・アルバム『Routes To Django』は弱冠13歳の時に収録されている。続いてウェス・モンゴメリー、ジョージ・ベンソン、ウェザー・リポート等にも感銘を受け、85年から86年にかけては元ウェザー・リポートのジャコ・パストリアスともツアーをおこなった。80年代後半から90年代前半にかけてはアメリカの名門ブルーノート・レコードと契約、バーナード・パーディーやダン・ゴットリーブ（元パット・メセニー・グループ）とも共演したフュージョン調のアルバム『Inferno』、ニールス・ペデルセンを迎えたスタンダード・ナンバー集『Standards』等を発表している。2000年代に入るとマヌーシュ・スウィングの今世紀版というべき“ジプシー・プロジェクト”を結成、ほかターンテーブル（DJ）も導入したジャズ・ファンク的なアルバム『Electric Side』、スタンリー・クラークとジャン・リュック・ポンティとのトリオ作品『D-Stringz』などでも話題を振りまいてきた。目下の最新作『Biréli Lagrène plays Loulou Gasté』ではフランスの高名なソングライターであるルイ・ガステの楽曲をアコースティック・ギターで奏でている。
今回の来日公演でビレリと共に演奏するメンバーは、前述ジプシー・プロジェクトの一員でもあるサックス奏者のフランク・ウルフ、自身のアルバム『Django Stories』にビレリを迎えたベース奏者のウィリアム・ブルナール。2010年代から共に活動する3人による以心伝心のステージがシアタージャズライブを彩る日が待ち遠しい。充実した飲食と共に充実した音楽を満喫し、終演後、全身を暖かくしたまま帰路につくオーディエンスの笑顔が早くも私の心に映し出されている。
11/23(日)夜公演ビレリ・ラグレーン・トリオは現在チケット好評発売中です！
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